「見つかったよ、本当に助かりました」彼のボイスメッセージは、私宛のものではありませんでした
コラム
2026/07/23
彼が頻繁にやり取りしていた相手が誰なのか、私はずっと確かめきれずにいました。その日、彼が差し出した紙袋に入っていたのは、半年前に欠けたあのマグカップだったのです。
スマホから流れ出したのは、知らない店内のざわめきと、私宛ての用件が一言も入っていない彼の声でした。
目次
誰に向けた言葉か、わからないその声は、私に向いていなかった彼が差し出した紙袋そして…誰に向けた言葉か、わからない
何度聞いても、彼が誰に向けて話しているのかわかりませんでした。残っているのは店の物音と、「見つかったよ、本当に助かりました」と弾んだ声を上げる彼の言葉だけ。
気になったのは、ここ半年の彼が、出かけ先を聞いても「ちょっと用事」とだけ返すことが増えていた点です。ボイスメッセージの向こうにあるものが、その用事の正体に思えて、彼がそのメッセージを取り消すまで、再生を止められないままでいました。
その声は、私に向いていなかった
もう1つ気がかりがありました。テーブルに置いた彼のスマホが短く震えるたび、彼は画面を下に向けていたのです。相手がだれか聞いても「仕事の知り合い」と返すだけで、誤魔化されるだけでした。
私と話すときよりずっと親しげなあのボイスメッセージと、こちらに見せたくないという彼の動きが結びついて、自分だけが蚊帳の外に置かれた気がしました。「さっき、なんか送った?」と送ってみると、返ってきたのは「ごめん、間違えた」の一言。聞きたいことはたくさんあるのに、確かめるのが怖くて、私はそこで質問を引っ込めました。
HOT ITEM彼が差し出した紙袋12