《はばたきの歌》
三木稔 作曲
秋浜悟史 歌詞
演奏:邦楽創造集団オーラJ
指揮:榊原徹
篠笛・能管:松尾慧
龍笛:清田裕美子
篳篥:鈴木絵理
尺八Ⅰ:高橋慧山
尺八Ⅱ:本間豊堂
尺八Ⅲ:阿部大輔
細棹三味線:野澤徹也
中棹三味線:大友美由奈
太棹三味線:山崎千鶴子
琵琶:櫻井亜木子
箏Ⅰ:大澤陽介
箏Ⅱ:平原愛香
箏Ⅲ:重成礼子
十七絃:松村エリナ
打楽器Ⅰ:篠田浩美
打楽器Ⅱ:望月太喜之丞
テノール独唱:小沼俊太郎
ソプラノ:髙橋結里 森川郁子 森有美子
アルト:小阪亜矢子 佐藤智子 横瀬まりの
テノール:市川泰明 中村康紀 福島康晴
バス:小藤洋平 菅井寛太 牧山亮
1950年代以降は日本の映画最長期でもあり、三木稔は藝大卒業後から寝る間も惜しみ映画の劇伴音楽を数百曲書き下ろし、多くの劇団に数々の演劇用の音楽、劇中歌も提供してきた。
そんな映画・演劇人との協働の中でも、座付き作曲家として名を連ねて傾倒したのが、戦後演劇を牽引した劇作家・演出家の秋浜悟史(1939 – 2005 )が主宰した「劇団三十人会」である。
秋浜の強烈な言葉と三木の旋律による協働作品は歌曲として歌われる作品も多いが、《はばたきの歌》も、現代邦楽に秋浜の生きた言葉を反射させた作品だ。
秋浜作の<アンティゴネーごっこ>(1966年初演)、<幼児たちの後の祭り>(1968年初演)の2作品の劇中歌を経て、1969年にあらためてテノール独唱、混声合唱を伴う大編成邦楽合奏曲とした。
三木は、同世代を共にする行動的な創作者に触発もされながら、戦争を振り返る「怒り」「とむらい」そして未来への「はばたき」というテーマに向き合った。
邦楽器の特徴と差異を感じる独奏に始まり、情動の突出を器楽変拍子で律動させると、独唱、合唱も加わりながら未来を期待し願う音楽と変化する。
日本音楽集団第8回定期演奏会に書き下ろされた作品。
《はばたきの歌》 秋浜悟史
死んだらそれでおしまい いなくなったあなたに 眼を忘れたあなたに
もうさよならのあいさつはしない けっしてふりむいてはあげない 死んだらそれでおしまい
あなたに羽根が生えようなら むしりとってやる ちぎりとってやる 死んでもそばを離れまい
ウソだもちろん まさかまさかまさか だれが泣いてやるものか 死んだらそれでおしまい
ためらいもなくそれでおしまい ああそれが辛いなら 復讐の朝に見舞われたくないなら
せめて片眼はあけていておくれ 死んだふりはしないでおくれ いとしい人よ
いとしい人よ ぽくにも小さな羽根が生えてきたようだ 湿ってくやしい悲しい羽根だけど
小さな羽根のまばたきで あなたの空へ飛び立とうと ぼくはつんのめり走りつづける
小鳥たちよぼくの体の重みを そんなに陽気にいそがしく 笑わないでおくれ なぐさめないでおくれ
いとしい人よ ぼくはもう気がちがいそう のろいの羽根をひきぬいて おのれの眼へ突き刺すんだ
痛みの涙をガソリンにして 眼に生えたとげとげしい羽根よ あなたの空へぼくをはこんでおくれ
やがては はばたきだ それまでは 眼をあけっぴろげに ひらいてはいけない ひらいてはいけない
やがては はばたきだ 眼の裏へ潜りこめ がまんしてがまんして
やがては はばたきだ なるほど 大切な仕事ほどあとまわしだ
やがては はばたきだ あきらめきれぬことは あきらめきれぬこととして
あきらめきれぬままに けっして切れぬように あきらめきるな
やがては はばたきだ 明日のために 今日をごまかすな 流れているはずの 赤い血を忘れるな
思い起こせ 吹き鳴らせ 血まみれの口笛
やがては はばたきだ ひらいてはいけないが とじてもいけない とじてもいけない
薄眼をあけて あるいはするどく あるいはやさしく あるいはこざかしく
するどくやさしくこざかしく 素顔をさらそう
それが素顔だと やがては はばたきなんだから
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