この作品は元々、かつて黒澤組のチーフ助監督であった堀川弘通の監督作品として黒澤が執筆した、山本周五郎原作の『日日平安』の脚本がベースになっている。『日日平安』は原作に比較的忠実に、気弱で腕もない主人公による殺陣のない時代劇としてシナリオ化されたが、東宝側が難色を示したため、この企画は実現しなかった。その後、『用心棒』の興行的成功から、「『用心棒』の続編製作を」と東宝から依頼された黒澤は、日の目を見ずに眠っていた『日日平安』のシナリオを大幅に改変し、主役を腕の立つ三十郎に置き換えて『椿三十郎』としてシナリオ化した(共同執筆は小国英雄と菊島隆三)。なお、黒澤は『日日平安』の主役には小林桂樹かフランキー堺を想定しており、『椿三十郎』で小林が演じた侍の人物像には『日日平安』の主人公のイメージが残っている。

ラストの三船と仲代の決闘シーンで、ポンプを使う手法で斬られた仲代の身体から血が噴き出すという特殊効果が用いられた。この手法自体はすでに『用心棒』で使われていたが、夜間シーンで画面が暗いことと出血の量が少なかったために『用心棒』では目立たなかった。今回ピーカン (快晴)で撮った『椿三十郎』での印象があまりにも強かったため、殺陣において最初にこの手法を採用した映画は『椿三十郎』だと一般に誤解されるきっかけとなった。とはいえ、血飛沫が噴き出す表現が、この映画以降の殺陣やアクションシーン等で盛んに模倣されるようになったのは事実である。他にも三十郎が、わずか40秒で30人を叩き斬るシーンなど殺陣の見所が多い。

本作はキネマ旬報ベスト・テン第5位にランクインされた。また、1999年にキネマ旬報社が発表した「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編」では82位にランクインされた[注釈 1]。1995年にイギリスのBBCが発表した「21世紀に残したい映画100本」には『西鶴一代女』(溝口健二監督、1952年)、『東京物語』(小津安二郎監督、1953年)、『乱』(黒澤監督、1985年)、『ソナチネ』(北野武監督、1993年)とともに選出された。黒澤明監督は、本作に登場する9人の若侍たちを時代劇ではなく現代の若者そのままで演らせたがり、本読みの段階でも本番さながらにカツラを着けメイクをし、衣装を着させてこれを行わせた。撮影に際しては、抜刀の場面がほとんどないにも拘らず真剣を帯びさせたため、撮影中に刀で自分の手を切った者もいた。

また、本読み後はそのままの姿で撮影所内をジョギングさせ、最後に小道具係の作った藁人形に向かって抜刀して走り、これを斬り倒させ、これを連日繰り返させた。この光景を見た他の組の連中からは「9人の馬鹿侍」などとひやかされたという。

オープンセットで若侍の4人が敵の捕虜になる場面では、後ろ手に縛られたまま忘れられて長時間放置され、騒いでやっと縄を解いてもらった。土屋嘉男が「こりゃあ監督のおごりでチャーシュウメンの一杯も食わせてもらわにゃなあ」とぼやくと、しばらくして本当にチャーシュウメン(チャーシューメン)の出前が来た。空腹を抱えた他の俳優全員、中でも「チャーシュウメンが大好きで、年がら年中昼飯がチャーシュウメン」という三船敏郎が凝視する中、4人は居直ってこれをたいらげた。

Share.

50件のコメント

  1. 国営放送は確かに鞘に入っているな⁉️しかし多分竹光だろう、間違いない‼️😂😂😂😂😂😂

  2. 男で大人、大人な男
    黒澤監督が、よくリアリズムを追及って言われるけど、最後の仲代達矢の、大量の血飛沫は、あり得ない事を承知で、映画的に面白いから採用した。
    映画のリアリズムを、手を抜かず追及したから、何時までも面白い❗️

  3. しかしセリフが聞き取りづらいなぁ。海外で黒澤が人気があるのは滑舌の良い吹き替えがあったり字幕スーパーの為らしいですよ。日本でも字幕を付けたらもっと人気が出ると思います。

  4. 本作以降、映画でもドラマでも漫画、アニメでも“上段から切り下ろす奴”と“下段から切り上げる奴”の対決は大抵後者が勝利するという法則が定着した

  5. 昔の映画テレビの主人公は大人が大人の役を演じているが、今は子供が大人の役を演じているように感じる。

  6. この浪人の男は自分が斬られるまで斬り続けるような生き方をしている。 鞘なんて無い。

  7. 確か出目昌伸監督が当時助監督のとき蛇口を握っていて タイミングを間違えたかもと思ったと、見えないけどじつは水が少しずつ出てるそうです足元に流れてるとか

  8. そらすごいしかっこいいんだけど、三船と黒澤って頂点すぎて参考にならない。
    しかも椿三十郎って黒澤が細かいこと気にせんでとにかく面白い映画作ったろ!って作った映画だし。

  9. 黒澤監督は やはり凄い! この動画出して大丈夫?クレーム来ない? とか 要らぬ心配するぐらい、黒澤監督作品は別格だねw  最近は黒澤作品を知らない人達が多くて この動画で監督の映画を観て 世界の黒澤 を知って欲しいね。

  10. これ、DVD以上の鮮明な映像をスローモーションで再生して、初めて三船さんの太刀筋がやっと確認できる。
    この立ち合いは、用心棒のピストル対刀と並ぶ名シーンですね。

  11. 人物が光で縁取られてるライティングが凄まじい。隣の屋敷から合図の花が流れてくるシーンでも花の色が見える様でした。
    白黒映像でもここまで美しく撮れるんですね。
    カラーフィルムは劣化するからと長らく白黒に拘り続けた黒澤監督らしい。

  12. いいよなぁ。色々すごい。ぼくが大学生の時、黒澤明監督は亡くなったが、その時ちょうどドイツ留学からの帰りで、飛行機で隣にいたイタリア人にイタリア語で書かれた新聞を見せられ、こいつは有名か?と指さされたので覗くと、黒澤監督の写真が出ていた。有名ですよ、と答えると、すごい日本人がいるなあ、と言っていたのを思い出します😊ちなみに椿三十郎の最後のシーンは、祖父に先に言われ、かなり腹が立ったのを覚えています。😊

  13. この歳になってこの頃の時代劇を観ると、役者さんの所作が現代時代劇のそれとあまりに違うので驚愕します。
    腰の据わった殺陣
    侍役の人々の歩き方
    女優さんが正座の状態から立ち上がる or 正座する時の動きや姿勢
    襖を開け閉めする動作・・・これらの動き&その際の姿勢が違いすぎるんですよ。

    体幹が強いというのか、背筋がまっすぐでブレがない。
    これが男優、女優問わずできてるので、動きが実に綺麗。

    特に殺陣のシーンでは身体がブレず腰が据わっていて、脚をドタバタ動かさないのでスゴい緊張感と迫力。
    「この時代の役者さんと現代の役者って、これほどに違うのだなあ!
    昔の役者さんはやっぱり日常生活からして現代の役者とは違うんだろうなあ!」
    と、文字通り仰天します。

  14. 今の俳優は見た目など、若いことだけが重宝される時代だけど、この頃はもっと、深みというか何というか、本質的な何かが、あった気がします。
    誰の発言か忘れましたが、笠智衆さんの演技を評し『戦争経験の有無が、その深みを変える』みたいなことを言われていたのを、この頃の映画を見るたびに思い出します。

  15. 世界の黒沢、三船だけあるよねー。間が凄かったな。斬る瞬間を何度も巻き戻した。カツシンと仲代にも見えた。米の巨匠たちが憧れるのも解る。

  16. このシーンって本当は大NGだったらしいけど、もうやり直しがきかないのと、勢いがあってまあいいかwってことでOKになったらしいですw

Leave A Reply