返した本に半券を挟んだまま、最後まで読めなかった俺の本心
コラム
2026/07/01
最後まで読んだと言ったのは、嘘でした。あの展覧会の帰りから、俺はその先のページをめくれずにいたのです。読み終えてしまえば、本当に終わってしまう気がして。
カフェのテーブルに文庫本を置いてから、俺は一度かけたカップから指を離しました。返すと決めたのは自分なのに、店に入ってから何度も入口の方を見ていました。彼女が本を開くのは、きっと俺が帰ったあとだろうと思っていました。
目次
別れを切り出したのは、俺のほうだった最後のページを、開けなかった読んだと、嘘をついたそして…別れを切り出したのは、俺のほうだった
付き合いが終わる前から、先に気持ちが離れていたのは俺のほうでした。彼女が将来の話をするたびに、俺だけがその未来を想像できなくなっていました。
それを正直に言えばよかったのに、俺は連絡を減らして、自然に距離ができるのを待ちました。最後には自分から別れを切り出したくせに、彼女から借りた本だけは手元に残ったままでした。
返さなければと思い、俺からカフェを指定しました。もう一度会う理由を、本に押しつけたのかもしれません。
最後のページを、開けなかった
本を返す前に、もう一度だけ読み進めようとしました。けれど、最後のページだけはどうしても開けませんでした。
その本は、彼女と一緒に行った展覧会のあとに借りたものでした。読み終えてしまえば、あの日のことも、彼女との関係も、本当に終わってしまう気がしたのです。だから俺は、読みかけのまま本を閉じました。
読んだと、嘘をついた12