単身赴任の父と息子の内緒のやりとり→「母さんの誕生日、何がいい?」の相談が100件ありました
コラム
2026/10/26更新
父から届いたストールの色の相談は、すぐに「すまん、間違えた。今のは忘れてくれ」と打ち消されました。その続きを父が誰としていたのか、答えは家の中にありました。
洗い物をしている間、ソファの上で息子のスマホが短い通知音を鳴らし続けていました。画面を見ては指を動かす息子に、誰からかと聞いてみると、返ってきたのは「じいじ」の一言。私の父のことです。スマホはそのまま、画面を下にしてクッションの上に置かれました。
目次
父と私のチャットは「元気か」だけ間違えて届いた父からのメッセージ息子のスマホに続いていた100件の相談そして…父と私のチャットは「元気か」だけ
父が遠方の工場へ単身赴任して、2年が経っていました。実家では、母が1人で暮らしていました。車で15分ほどの我が家から、中学1年の息子が部活帰りによく顔を出していました。
父と私のチャットは、月に1度の「元気か」「元気だよ」と、私が送るスタンプだけ。父は昔から、用件以外の言葉を打たない人でした。
その父が、この春スマホを持ったばかりの息子とは、毎日のようにやりとりをしているようでした。何を話しているのか聞いても、息子は「別に」と言って部屋へ上がっていくだけ。
伏せられたスマホが目に入るたび、洗い物の手が少しずつ遅くなりました。
間違えて届いた父からのメッセージ
その日、息子が塾へ出かけたあと、今度は私のスマホが鳴りました。父からです。
「ストール、紺と黒どっちがいいと思う?」
「元気か」以外の言葉が父から届いたのは、久しぶりでした。ストールという単語と、来月が母の誕生日だということが、頭の中でゆっくりつながっていきました。
返事を考えているうちに、父から次のメッセージが届きました。
「すまん、間違えた。今のは忘れてくれ」
誰に送るつもりだったのだろう。「何の話?」と送ると、すぐに既読がつきました。けれど、その先はいくら待っても届かないまま。テーブルのお茶は、手をつけないまま冷めていきました。
今頃、父は画面を前に考え込んでいるのだろうか。そう思いながら、スマホを伏せました。
息子のスマホに続いていた100件の相談12